これ吸う間だけ、笑ってて

「答え合わせはいいから 今夜ふたり夢を見ようよ」

「クイーン・エリザベス」感想


 クイーン・エリザベス―輝ける栄冠と秘められし愛―
を観劇して。感想書こう!ネタバレなしで!と思ったけど全然無理だったし感想と言うよりは考察もあるし、要約するとエセックス伯素晴らしかったよ髙木くんはかっこいい!史実からしても女王とエセックス伯の関係性やばい!みたいな話しかしてないので、観劇済みの方や見て大丈夫な方のみお願いします。どちらかというと完全に観劇オタクの自分用備忘録なのでどうか色々勘弁してください。鉄は熱いうちに打て、ということで熱いうちに書いたら5000字あります。
 
 

 
 

 以下、感想や思った所の箇条書き。(何幕何景、はプログラムに記載があったのでそれを参照してます)
 
 ・セットがかなりシンプルで、かつすごく場転するし暗転短いしそういう意図があるのかな?と思いました→プログラムに「演者も含めチェス駒のように動き、不安定な空気のセット」との旨があって納得。余白が多い分、想像の余地がたっぷりあって尚且つ演者の華やかさが引きたつな〜と思いました。特に女王が現れると衣装も相まってすごく華やか。
 
 ・衣装がほんとに素敵だった〜!女王の衣装と被り物もそうだけど、レスター伯はロングのジャケット、エセックス伯は二段ドレープのマントがすごく素敵だった。レスター伯が明るく女王に語りかける度にジャケットの裾がふわっと舞う感じが、女王がずっと信じたレスター伯の明るく優しい人柄を感じたしエセックス伯のマントは立ち回る度にすごく派手で綺麗だった!あとエセックス伯のサテンと黒とちょっとキラキラした感じが自信家で若い、作中で言う「強い魂」みたいなのを感じた。
 プログラムで見るとやっぱりエセックス伯のマントはキラキラの糸が織り込んであった。レスター伯のジャケットは凹凸がある織物で落ち着いた大人、って感じ。プログラムは衣装ちゃんと見れて嬉しい。

 ・大地真央様……めちゃくちゃ……すごかった……
 1幕の第1景ロンドン塔〜第2景エリザベスの部屋あたり、20代の設定のシーンはほんとにうら若い少女に見えました。めっちゃ綺麗。作中でどんどん歳を重ねるように見えてすっご……って心奪われました。
 あと女王にはスポットライト以外にピンスポが真上から割とずっと入ってて、これがレスター伯の言う「神の御加護」「淡い光に包まれてる」というニュアンスかな?と。だから2幕第6景のエセックス伯との対峙は、女王があまりに神聖すぎてエセックス伯の今にも壊れてしまいそうな感じが対比で引き立ちすぎて辛かった(天才だった)

・ベス!!ベス最高だった……女王にずっと仕えている女官ベス。喜怒哀楽がはっきりしていておちゃめで、舞台を回していくような役なんだろうけど後半の憂うような表情と冷静さが少し平静さを欠く女王をぐんと引き立たせていて素敵だった……縁の下の力持ち。

 ・長野さん、ちゃんと演じられている姿を拝見したのは初めてだったんですがすごく素敵だった……最初のシーンの窓からくるシーンはうっとりするほど。ディズニーの王子様みたいな、穏やかでロイヤルな低い声と柔らかい表情、ずっと理性的なのにどこか自分の理想の女王像を信じて疑わない感じがすごい、無邪気な紳士で。レスター伯もエセックス伯も確かに女王の支えになっていたけれど、一方でその存在が女王を苦悩させていたんだな〜と。
あとレスター伯と奥さんのシーンめっちゃ辛かった……奥さんをないがしろにしてるつもりは無いのだろうけど明らかに心は女王のもので、レスター伯は女王から見たらすごく爽やかで心の支えだったかもしれないけど女王以外の人間から見たらまた少し違う人物だったんだろうな。

 
 ・1幕10景、エセックス伯の最初の登場シーン。まず出てきた瞬間の会場から出た\はわぁ……♡/みたいな感嘆のため息、わかる。そして女官ベスの明らかに浮ついた声に「いやわかるこんなんいきなり来たらそりゃなるわ」と思ってみんな笑ってた。
 しょっぱなから女王はエセックス伯のやんちゃなとこを見抜いていたし、なのに結局好きにさせていたの、女王ダメ男が好きなのか……ってちょっと親近感すら湧いた。まあ顔がいいもんね。わかる。何もかも許す。

 ・2幕1景、例のシーン。
 散々みなさんペトラって言うから何かと思ったらペトラだった。というか、女王のお戯れ。多分サービスシーン的な意味合いもある髙木くんのアイドル力全開シーンなのに、なんかだいぶいかがわしくて面白かったです。
 と、いうか。
 踊り終わって召使いの方に被り物と飾りを外してもらった後にジャケットを着てボタン閉めながら喋っているシーン、めちゃくちゃエロス……って感じじゃなかったですか?私だけ?あのシーンやたら気だるげで女王のお遊びに付き合ってあげてる感がそこだけ出ていて最高に刺さった。その後の「嘘でも嬉しい」と少し寂しそうに笑う女王にたくさんおしゃべりして調子よく愛を語って「おだまり」と唇に指を当てられて、だんだん静かになって態度で愛を示すかのように寄り添うシーンはなんか空気感でもう……母と息子のような、恋人のような、愛人のような、すんごく危うい甘さがビシビシ感じてよかったですね。中世ヨーロッパ独特の甘く華やかなのにどこかちょっと病んでるような感じが。
「他に恋という言葉の使い道を知りません」
 「嘘でも、ありがとう」
 エセックス伯は史実では女王の恋愛ごっこに付き合ってあげてる、みたいな空気感だったらしいけど処刑前に懺悔したりなんだかんだ女王の事を愛していたのだろうな、というのが感じられたシーン。そして同時に女王も薄々それをわかっているのが甘く危うく切なく、どこかこの先の未来が興奮ではないことの暗示みたいで最高に……よかった……(最後の最後に語彙がない)

 ・髙木くん、目の演技がめちゃくちゃ上手いよねって話。前述した2幕1景の寝室であまーい時間過ごしてるシーンとか、目が甘えててすごいな……って。うっとりしているようで、いたずらっぽくて、まさに若いツバメ。
 それと同じ寝室、でいうと2幕6景からはもう割れそうな硝子みたいな繊細さで、自分の感情に振り回され壊れそうで女王の首に手をかけるも殺せず力なく手を離すとこ、からの膝を折って懺悔するみたいな場面は伝う汗が涙に見えました。それくらい女王の寵愛という名の鳥籠から放たれてしまってもうどうしたらいいかわからない、自分の過ちにも気付きもうどうにもならない悲しみを抱えたエセックス伯が朝の寝室の淡い光の中であまりに綺麗だった。強い生命、というより今にも死にそうな生命のきらめきという感じ。
 最後の捕えられて処刑を暗喩するシーンの叫びも、怒りとか悲しみとかごちゃ混ぜにした、だけど子供が泣いてるみたいな声と表情、ピンスポでブルー系の光が入った瞳がめちゃくちゃ……辛かった……よかった……(すぐ語彙が死んでしまう)
 
・2幕5景。遠征先のアイルランド、ボロボロになったエセックス伯に叔父が役職の解任を告げるシーン。政敵だったセシルが役職につき、もう女王の心はお前にないと言われた後の切ないくらいの狂いっぷりがめちゃくちゃすごかった。女王は自分を守って甘やかしてくれる、と信じて疑わずにいたのに……と自暴自棄になり立ち回りと狂った笑いで女王の元へ行こうとするエセックス伯。なんというか舞台の空気が変わった……と思いました。エセックス伯の心情の濁流に客席ごと飲み込まれたみたいで息が止まりそうになりました。

 ・2幕6景、遠征先で役職の解任を告げられて舞い戻ってきたエセックス伯。「あなたを信じたのは私の罪です 殺したいほど憎いでしょう 殺しなさい あなたに殺されるなら私は喜んで受けいれます」的な発言をした女王の首を絞めようとしてできなかった後。女王に対して懺悔をするようなシーン、これは史実的には処刑前に泣いて懺悔して女王への言葉を述べたことを引っ張ってきたシーンなのかな〜と思った。このシーン、前幕の狂いようから一変して、まるで叱られた子供みたいなあどけなさですごいしんどかった(褒めてます) 自分でもきっと自らを律することが出来ない激情型な精神を憂いていたのかな(見た目が自担なことによりエセックス伯に絶大な感情移入をするオタク)
 2幕6景ラストでエセックス伯が去った後に「ごめんなさい」と泣いた女王、めちゃくちゃエセックス伯のこと好きじゃん……って思いました。その前に「彼の処分は私が決めます」的な発言をしていたし、割と覚悟してたんだろうなーと。愛しているからこそこの男の運命を最後まで決めないといけない、と。女王としての責任、つらい。
 ちなみに予習としてエリザベス一世関連の書籍を読んだりWikipediaを見たりしましたが、エセックス伯が「長身で体格がよく、端正な顔立ち」「晩年の女王が寵臣との恋愛遊戯の雰囲気を醸すことを病的に欲し、その願望を感じとっていた」との旨があり、そう見ると2幕一景のあの絵画の風刺画のようなお戯れがめちゃくちゃ意味深というか、やっぱりちょっとエセックス伯が「女王に付き合ってあげてる」みたいな空気感出してていいな〜爛れてんな〜そしてめっちゃ似合うしエセックス伯の解釈がそれな〜と自担ベタ褒めタイムに入りそうになります。あとエセックス伯処刑のサインを女王は躊躇わなかったけれど、処刑後たびたびエセックス伯を思い憂い泣いていたらしいです。めっちゃ好きだったんじゃん……
 見てない人はぜひWikipediaエセックス伯ロバート・デヴァルーのページ見てください。

 ・最後の最後でやっとエセックス伯を「ロバート・デヴァルー」と呼んで「やっと呼んでくれましたね」と笑ったエセックス伯に泣いた。エセックス伯を終始「少年」と呼び、ロバート・セシルの事もロビンと呼んだ女王、本当にレスター伯を深く愛していたんだな……と。
 レスター伯が義理の父とならなければエセックス伯は死ななかったのかな、とか思いましたが実父のエピソードからしても一生家柄に振り回されていたんだな……という。2幕5景アイルランドの森でのエセックス伯めっちゃ切羽詰まってて、半ば女王を盲信してて、幼さすら見えて怖くて病んでてすごくよかった。けど立ち回りしてるとこで「脚長……」って思った。脚が長い。

 ・エセックス伯処刑が1601年、女王死去は1603年。ラストシーンはプログラムによると「孤高の女王」というタイトルが付いているけど一体いつ頃なんだろうな、と思いました。多分場面的に教会的な感じで、エセックス伯死後すぐなのかな?とかあるいは女王死後の抽象的なイメージなのかな?とか思ったんですが多分レスター伯の台詞的にまだ存命中のシーン。

 ・2幕のどこか忘れたけど、レスター伯亡き後にその幻影を見て「ロバート!!」と名前を叫ぶシーンめちゃくちゃ好きでした。人間・エリザベスの弱く脆い所が見えたような感じがして。
 
 ・レスター伯とのシーンはずっと女王も人間らしい表情で「少女の恋」って感じだったけどエセックス伯とのシーンは女王らしいまま私のかわいい若いツバメ、みたいな、あくまでこの美丈夫を飼っている、みたいな空気感がすごかった。女王は彼を女王の手中に収めていると思ってるし、エセックス伯も女王は自分に甘い、守ってくれる、とお互い思ってるからヤバいな……と思いました。史実が。
 髙木くんこの先ほんとに年上マダムの愛人役とかやったらいいと思います。潤くんがやってた東京タワーみたいなやつ……ずっと待ってます……

 ・女王の髪がブロンドと赤毛の2パターンあったのは、赤毛はカツラ、って意味合いなんですよねきっと。晩年10年間くらい(エセックス伯を寵愛していた時期)はかつらと化粧にかなり頼っていた、という話らしいので。あと作中で女王のおかげで繁栄していた時代(この時代の一幕こそが「薔薇と白鳥」なんですね)をあんまり描かかなったのはやっぱり人間性と2人の男にスポットライトを当てたからなんだなーとパンフレットを読んで思いました。

 ・なんとなく寺山修司毛皮のマリー」の台詞「人生はどうせ一幕のお芝居なんだから。私は、その中でできるだけいい役を演じたいの。」を思い出した。いい役の人生も大変ですね。
 エリザベス一世が「イングランド王国の君主 クイーン・エリザベス」を演じながら生きて時に自分の振る舞いや言葉にこれでいいの?と自問自答したり、これでいいの!と鼓舞する姿が人間らしくてクイーンの姿との対比を感じた。
 
・長野さんと髙木くん、声のニュアンスというかなんか……似てますね。これはあえてそうしているのかわかりませんが、ちょっと低めでハスキーなのに甘い声が程よく似ていて「レスター伯亡き後、彼の隙間を埋め、その姿を重ねられているエセックス伯」という設定にめちゃくちゃマッチしていて苦しかった。特に2幕6景、女王とエセックス伯が対峙するシーン。
 威勢よく寝室に入ってきたかと思えば言葉が出ず、沸騰するかのような怒りの感情の後に、崩れ落ちるかのように膝を折って悲しみに暮れてみせる。親に叱られ甘える子供のようで、愛した人を亡くした男のような、振り絞るように「女王に愛されたかった」と言うエセックス伯がもう……(1回語彙が死ぬ)……とにかく髙木くんの人懐っこい性格故ににじみ出る、誰かに突き放された時のほんとに頼りなく泣いちゃいそうな感じがすごかったですね。
 女王に対して母のように甘え、神のように信じ、恋人のように愛したんだなと思いました。
 そっと何もかも諦めるように部屋を去り、暗く諦めの空気が漂うエセックス伯を包む滑稽なまでの周りの持ち上げ方。それからの怒涛のような立ち回りと処刑を暗喩する最後の叫び。エセックス伯は自分の類まれなる人を惹きつける才能を飼い慣らせずに食われてしまったのかな、と思いました。
 でも皮肉にも、イングランドの法律と大逆罪の名の元に処刑されたのは国と結婚した女王に対する最後の望みだった「私を殺してください」が結果的に叶ったんだな〜と。
 その後のラストシーンでの穏やかな話し方、これが本来の彼なんだな、やっとあらゆるしがらみから解放されたんだな……と泣いてしまった。ラストシーン前のエセックス伯怒涛の最期からの畳み掛けに。
 「貴方はイカロスだ。その蝋の羽根で太陽に近づきすぎた。」

 ラストシーンで淡い光に照らされる彼は死んでやっと、神の御加護を受けられたのかなあ。



  いやなにが言いたいって髙木雄也さん凄いですねって話なんですよ。なんというか、人を惹きつける魅力があり、自信家で口が上手くて、なんだかんだ人を信じやすく怒るとすぐ拗ねてしまう。子供のような純粋さと狂気を一緒に飼っている。そんなエセックス伯ロバート・デヴァルーをのびのび、いまの29歳の自分の素の魅力を生かしたままたくさんの素晴らしいキャストの中で演じ切った髙木くんが自担でめちゃくちゃ誇らしいです。あとカテコ2回目でスタオベして3回目やったときに緞帳降りる中胸のとこで手フリフリしながら「ありがと」って口ぱくぱくしてて「ああ、アイドル……自担……最高……」ってなりました。何の話ですかね。
 
つまりは。
 すごく引き込まれて幸せな約3時間でした。
 また髙木くんが舞台に立つ姿を見れますように。
 やっぱり演劇は楽しいし劇場には魔法がかかってる。
 これからも髙木くんに、舞台の神様の御加護があらんことを。




あと、日生劇場の開演5分前のお知らせが鐘の音なの、今回の設定もあってまるでヨーロッパにタイムスリップしたみたいな気分になれてすっごくよかったです。会場ごと世界観にマッチしていて素敵だったな。またいつか行く機会がありますように。